PERとは?初心者向けに計算方法と業種別の目安、AI半導体株・バブル時の水準までエンジニア投資家が解説

「PER(ピーイーアール)が低いと割安、高いと割高」——投資を始めるとすぐに出会う言葉ですが、いざ自分で銘柄を選ぼうとすると「で、何倍なら買っていいの?」「同じPERでも銀行と半導体で全然違うのはなぜ?」と迷ってしまいますよね。投資を始めた頃のわたしも、まさにそこでつまずきました。

この記事では、エンジニアとして働きながら高配当バリュー株への投資を続けているわたしが、PER(株価収益率)の意味と計算方法なぜ業種(セクター)によって標準的な値が違うのか、そして読者の方からリクエストのあったAI半導体株のPER水準バブルのときPERはどこまで上がるのかを、初心者の方にもわかるようにまとめました。

PERとは?まず言葉の意味から

PER(Price Earnings Ratio=株価収益率)とは、株価が「1株当たりの利益」の何倍まで買われているかを表す指標です。日本語では「株価収益率」と呼びます。

計算式はとてもシンプルです。

PER(倍)= 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)

「1株当たり利益」は EPS(Earnings Per Share) とも呼ばれ、純利益 ÷ 発行済株式数 で求められます。会社全体で見ると、PERは次のようにも書けます。

PER(倍)= 時価総額 ÷ 純利益

イメージは「投資の回収にかかる年数」

PERのいちばん直感的な理解は、「いまの株価は、その会社の利益の何年分か」です。

たとえば、株価1,500円・1株当たり利益100円の会社なら、

1,500円 ÷ 100円 = PER 15倍

これは「いまの利益がずっと続くと仮定すると、株価のもとを取るのに約15年かかる」という意味になります。PERが低いほど「少ない年数で回収できる=割安」、高いほど「回収に時間がかかる=割高(その分、将来の成長を期待されている)」と読みます。

PERの目安は何倍くらい?

ざっくりした目安として、日本株(日経平均・TOPIX)全体の平均PERはおおむね14〜16倍で推移してきました。ここから、

  • 15倍より低い → 相対的に割安の可能性
  • 15倍より高い → 相対的に割高、または成長期待が大きい

という見方が一般的です。わたし自身、バリュー株を選ぶときは「PER15倍以下」を一つの目安にしています。

ただし——この「15倍」をすべての銘柄に当てはめてはいけません。ここがいちばん大事なポイントで、次の章につながります。

「実績PER」と「予想PER」の違い

PERには2種類あります。

  • 実績PER:すでに確定した前期の利益で計算したPER
  • 予想PER:今期の会社予想(またはアナリスト予想)の利益で計算したPER

株価は「これからの利益」を見て動くので、実務では予想PERを使うことが多いです。証券会社のサイトで単に「PER」と書いてある場合は予想PERを指していることが多いですが、念のためどちらか確認するクセをつけると安心です。

なぜ業種(セクター)でPERの標準値が違うのか

PERでいちばん誤解されやすいのが、「業種が違えば“普通のPER”も違う」という点です。半導体株のPERが40倍でも割高とは限らず、銀行株のPERが10倍でも割安とは限りません。

理由はシンプルで、PERには「将来の利益成長への期待」が含まれているからです。

  • これから利益が大きく伸びると期待される業種(半導体・IT・グロース)
    → 「将来の大きな利益」を先に織り込むので、PERは高くても許容される
  • 成熟していて利益が安定だが大きくは伸びにくい業種(銀行・商社・素材・公益)
    → 将来の急成長を見込みにくいので、PERは低めが普通

つまり、高PER=悪、低PER=善ではありません。「その業種の標準と比べて高いか低いか」で見るのが正しい使い方です。

業種別PERのおおまかな目安

下の表は、わたしが頭の中で持っているざっくりした業種別の“普通のPER”の感覚です(相場全体の水準で上下するので、あくまで目安としてください)。

業種の例 PERの目安 タイプ
半導体・ハイテク・グロース新興 30〜50倍以上 高成長期待
情報・通信、サービス 20〜30倍 成長期待あり
医薬品・食品・日用品 15〜25倍 ディフェンシブ(安定)
機械・電機・自動車 10〜20倍 景気敏感
商社・鉄鋼・海運・素材 8〜12倍 バリュー(景気敏感)
銀行・金融 8〜12倍(時に1桁) バリュー
不動産・建設・電力ガス 8〜15倍 バリュー・公益

高配当バリュー株は、この表の下のほう(低PERの業種)に集まりやすいのが特徴です。わたしのポートフォリオも、銀行・商社・建設・不動産・素材・公益といった「低PERが普通」の業種が中心になっています。

💡 大原則:PERは「同じ業種の銘柄どうし」で比べる。銀行株と半導体株のPERを直接比べても意味がありません。

AI半導体株のPERはどれくらい?

ここからは、リクエストの多いAI半導体株のPERを実際の数字で見てみましょう。以下は2026年5月時点のおおよその予想PERです(株価は日々動くので、最新値はご自身でご確認ください)。

銘柄(コード) 予想PERの目安 タイプ
エヌビディア(NVDA) 約24倍 AI半導体の中心
アドバンテスト(6857) 40倍前後 半導体検査装置
東京エレクトロン(8035) 約26倍 半導体製造装置
三井住友FG(8316) 約14倍 メガバンク(参考・バリュー)
(銀行セクター平均) 約9〜10倍 参考・バリュー

半導体株のPERが、銀行株(9〜14倍)と比べて明らかに高いことがわかります。これは「いまの利益」ではなく「これからAI需要でさらに利益が伸びる」という期待を、株価が先に織り込んでいるためです。

意外なポイント:エヌビディアのPERは「下がっている」

おもしろいのは、AIブームの主役であるエヌビディアの予想PERが約24倍と、意外に高すぎない点です。AIブームが本格化した2023年以降の平均が約35倍だったことを思うと、むしろ落ち着いた水準です。

理由は、利益(EPS)そのものが急成長したから。PERは「株価 ÷ 利益」なので、株価が上がっても、それ以上に利益が伸びればPERは下がります。高成長株のPERを見るときは、「株価」だけでなく「分母の利益が伸びているか」を必ずセットで見ることが大切です。

高PER株のリスク:期待が剥がれると一気に下がる

裏を返すと、高PER株は「将来の成長」を前借りしている状態です。決算で成長が少しでも鈍ると、前借りした分が一気に剥がれ落ち、株価が急落することがあります。実際わたしが相場を見ていた局面でも、好決算なのに「期待ほどではない」という理由で半導体関連株が1日で-19%下げる、ということが起きました。

「成長とリターンは必ずしも一致しない」——これがわたしがグロースよりバリューを選んでいる理由のひとつです。

バブルのとき、PERはどこまで上がるのか

「高PERでも成長すれば正当化される」とはいえ、期待だけが先走って、説明のつかない水準までPERが膨らむのがバブルです。歴史的な2つの例を見てみましょう。

① 日本のバブル(1989年):日経平均PERが60倍超

日経平均株価が当時の最高値38,915円を付けた1989年末、日経平均の予想PERは60倍を超えていたといわれます。適正水準が15〜20倍とされる中での60倍は、「利益の60年分」を買っていた計算で、明らかに行き過ぎでした。その後の長い下落につながったのはご存じのとおりです。

② ITバブル(2000年):ナスダックPER68倍、シスコは100倍超

2000年のITバブルでは、米ナスダック総合指数のPERが約68倍まで上昇しました。当時の主役だったシスコシステムズに至っては、ピークでPERが90〜150倍ともいわれる水準まで買われました。その後ナスダックは約2年半で5分の1近くまで下落しています。

「いまのAI相場はバブルか?」

よく話題になるテーマですが、ここは見方が分かれます。「バブルだ」とする見方は、AI関連への期待集中・設備投資の過熱を指摘します。一方「まだバブルとまでは言えない」とする見方は、前述のとおりエヌビディアの予想PERが約24倍と、ITバブル時の異常な水準(68〜150倍)とは桁が違うこと、実際に利益が伴って成長していることを根拠にします。

どちらが正しいかを当てるのはプロでも困難です。わたしにできるのは、PERという「期待の温度計」を定点観測しながら、一極集中に賭けすぎないことだと思っています。

バリュー株投資でPERをどう使うか(わたしの実践)

最後に、わたしが実際にPERをどう使っているかを3つにまとめます。

  1. 必ず同業種内で比較する。市場平均や他業種ではなく、「同じ業種の似た会社」と比べて割安かを見ます。
  2. PER単体で判断しない。PER(利益面)に加えて、PBR(資産面)・配当利回り・財務を組み合わせて総合的に見ます。
  3. 「なぜ低PERなのか」を必ず調べる。低PERには「割安」と「衰退の織り込み」の2種類があり、後者を買ってしまうのがバリュートラップ(割安の罠)です。

よくある質問(FAQ)

Q. 実績PERと予想PER、どちらを見ればいい?

基本は予想PERです。株価は将来の利益を見て動くためです。ただし会社予想は外れることもあるので、過去の実績PERと見比べて「予想が楽観的すぎないか」もチェックすると安心です。

Q. PERが「-(マイナス)」や「表示なし」なのはなぜ?

その会社が赤字(純利益がマイナス)だと、PERは計算できず「-」や空欄になります。赤字企業はPERでは割安・割高を判断できないので、PBRなど別の指標で見ます。

Q. PERは低ければ低いほど良いの?

いいえ。極端に低いPERは「市場がその会社の将来を悲観している」サインのこともあります。業績が右肩下がりの会社の低PERは、安いのではなく「衰退を織り込んだ結果」かもしれません。低PERは「お宝」と「罠」の両方がある、と覚えておきましょう。

Q. PERとPBRはどう使い分ける?

利益が安定している業種はPER、銀行・不動産など資産の価値が重要な業種はPBRが向いています。わたしは両方を併用しています。

まとめ

PER(株価収益率)について、要点をまとめます。

  1. PER=株価 ÷ 1株当たり利益。「利益の何年分まで買われているか」を表す。
  2. 全体の目安は15倍前後だが、業種によって“普通のPER”は大きく違う。半導体は高く、銀行は低いのが普通。
  3. 比較は必ず同業種内で。高PER=悪、低PER=善ではない。
  4. AI半導体株のPERは高め(アドバンテスト40倍前後など)だが、利益の急成長でエヌビディアの予想PERはむしろ約24倍まで低下。分母の利益も必ず見る。
  5. バブル時はPERが暴走する(1989年の日経平均は60倍超、ITバブルのナスダックは68倍・シスコは100倍超)。PERは「期待の温度計」として使う。

PERは、たった一つの数字で「市場がその会社にどれだけ期待しているか」がわかる、便利な温度計です。業種という“ものさし”とセットで使う——これを意識するだけで、銘柄選びの精度がぐっと上がります。

実際にわたしがどんな銘柄を、どんな指標で見て売買しているかは、日々のポートフォリオ記録で毎日公開しています。銘柄の選び方そのものを知りたい方は、バリュー株の選び方|5つの条件も併せてどうぞ。


免責事項:本記事は個人の投資記録・学習メモであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載のPERなどの数値は執筆時点(2026年5月)のおおよその目安であり、最新の値はご自身でご確認ください。投資はご自身の判断と責任で行ってください。