【キオクシア決算】Q2純利益1兆3,557億円で会社見通しを上回り初配当90円、それでも次の四半期は横ばい——3つのシナリオで考える

はじめに

キオクシアHD(285A)が、10月30日の18時45分に2027年3月期の第2四半期(中間期)決算を発表しました。わたしは34株を平均取得単価17,811円で持っていて、10/30終値13,470円で含み損はマイナス147,594円・マイナス24.37パーセント。ポートフォリオの中でいちばん大きな含み損を抱えている銘柄です。

決算発表は金曜の引け後だったので、株価の反応が分かるのは週明けの11月2日です。その前に、決算の中身を自分なりに評価して、「この先どうなったら、どうするか」をシナリオ別に整理しておこうと思い、この記事を書きました。

結論を先に書きます。

観点 わたしの評価 ひとこと
Q2の実績 ◎ 自社の見通しを売上で+3.8%、純利益で+6.7%上回った
Q3の見通し △ 売上+0.8%・純利益+0.3%と、ほぼ横ばい
株主還元 ○ 初配当(分割前90円)と累進配当の方針。ただし配当性向は約2%
財務 ◎ 自己資本比率49.8%、借入金を上回る現金
株価の水準 割安に見えるが要注意 Q3の利益ペースでPER約4倍。シクリカル株のPERの低さは、そのまま割安とは言えない

「実績は文句なし、でも株価が見ているのは来年」——これが、今回の決算を読んだわたしの感想です。

決算の数字を整理する

四半期ごとの推移

キオクシアは年間の業績予想を出さず、次の四半期の見通しだけを出す会社です。メモリ業界は環境の変化が速いため、というのが会社の説明です。なので、四半期ごとの数字を並べて見るのがいちばん分かりやすいと思います。

項目 前期Q4(1〜3月)実績 Q1(4〜6月)実績 Q2(7〜9月)会社見通し Q2(7〜9月)実績 Q3(10〜12月)会社見通し
売上収益 1兆29億円 1兆7,671億円 2兆3,900億円 2兆4,800億円 2兆5,000億円
営業利益 5,968億円 1兆2,700億円 1兆8,900億円 1兆9,947億円 1兆9,950億円
純利益(親会社帰属) 4,077億円 8,422億円 1兆2,700億円 1兆3,557億円 1兆3,600億円
1株利益(分割後換算) — 513.30円 — 838.31円 851.11円
前の四半期比(売上) — +76.2% +35.2% +40.3% +0.8%
想定為替(1ドル) 155円 160円 162円 161円 157円

Q2は、7月末に自社が出した見通しに対して、売上でプラス3.8パーセント、営業利益でプラス5.5パーセント、純利益でプラス6.7パーセント上回りました。想定為替は見通しの162円に対して実績161円と、ほぼ同じ。つまり、円安の追い風で上振れたのではなく、本業の上振れです。

会社の説明では、増収の理由は「生成AI用途を中心としたデータセンター向けの需要が旺盛で、平均販売単価が大幅に上昇したこと」と「出荷量(記憶容量ベース)の増加」です。

中間期(4〜9月)でみると

項目 前年中間期 今回の中間期 倍率
売上収益 7,911億円 4兆2,472億円 約5.4倍
営業利益 1,308億円 3兆2,647億円 約25倍
純利益(親会社帰属) 589億円 2兆1,979億円 約37倍

1年で売上が5.4倍、純利益が37倍。数字だけ見ると、ちょっと現実感がありません。Q2の売上総利益率は約82.8パーセント、営業利益率は約80.4パーセントです。メーカーでこの利益率は、ふつうはありえない水準だと思います。

ここは裏返して読む必要もあります。1年前の中間期は、営業利益1,308億円だった会社です。メモリの値段が上がれば利益が何十倍にもなり、下がれば同じ速さで縮む。これがメモリ事業の性質です。

決算の評価: 良かった点

1. 見通しを上回り、利益率もさらに上がった

Q1の営業利益率は約71.9パーセント、Q2は約80.4パーセント。売上が伸びただけでなく、儲けの効率も上がっています。値上げが通っている、つまり今のところは“売り手市場”が続いていると読めます。

2. 初配当と、累進配当の方針

同じ日に「株主還元方針及び剰余金の配当(中間配当・初配)に関するお知らせ」が出ました。

  • 中間配当は1株90円(分割前の株数ベース)。配当総額は479億3,700万円、支払開始は12月8日
  • 10/1に1株→3株の分割をしたので、分割後に直すと1株30円
  • 期末配当の予想は「未定」
  • 今後の方針は「ネット・キャッシュポジションを維持し、機動的な自己株式の取得及び累進配当を基本方針として、中長期的に余剰となった資金の100%を株主還元に充当」

「累進配当」は、原則として配当を減らさず、維持か増配を続けるという方針です。高配当株を中心に買っているわたしにとっては、いちばん気になる言葉でした。8月には8,000億円の自社株買いも実施済みです。

わたしの受け取り分は、基準日の9月30日時点で持っていた分割前の10株×90円=900円(税引前)です。10/15以降に買い増した分は、基準日のあとなので対象外です。

3. 財務がとても強くなった

項目 2026年3月末 2026年9月末
自己資本比率 37.9% 49.8%
現金及び現金同等物 4,707億円 1兆3,973億円
社債及び借入金 1兆476億円 6,039億円

借入金を繰り上げて返しながら、8,000億円の自社株買いもして、それでも現金は約9,300億円増えました。10月13日にはS&Pの格付けが「BBB」に上がっています。

決算の評価: 気になった点

1. Q3の見通しは「横ばい」

いちばん大きいのはここです。会社の説明は「データセンター向けの需要が旺盛に推移することが予想されるものの、為替の悪化を見込むことなどから、第2四半期と同水準の業績を見込んでいます」。

前の四半期比の売上の伸びは、プラス76パーセント→プラス40パーセント→プラス0.8パーセント(見通し)。伸び率で見ると、急ブレーキです。

ただし、為替の想定が161円から157円に円高になっているので、ドル建てに直すと、Q2の約154億ドルからQ3の約159億ドルへ、プラス3パーセント強の伸びです。「ドルでは少し伸びるが、円高で打ち消される」というのが会社の見立てだと思います。それでも、Q1・Q2のような急成長の局面は終わりつつある可能性があります。

株価は「今の利益」より「これから利益が増えるか減るか」で動きやすい。Q3見通しが横ばいだと、市場は“ピークが近い”と受け取るかもしれません。

2. スマホ・PC向けの表現が変わった

決算短信の市場環境の説明を、Q1とQ2で比べてみました。

  • Q1(7月末): 「スマートフォン、PC向け需要は堅調である一方、データセンター及びエンタープライズ向けでは〜市場の拡大が継続」
  • Q2(今回): 「スマートフォン、PC向け需要は鈍化傾向である一方、データセンター及びエンタープライズ向けでは〜市場の拡大が継続」

「堅調」から「鈍化傾向」へ。データセンター向けが強いぶん目立ちませんが、スマホ・PC向けは弱くなってきているようです。AI向けの1本足になりつつある、とも言えます。

3. 配当は「始まった」だけ

中間配当の総額479億円は、中間期の純利益2兆1,979億円のおよそ2.2パーセント。8月の自社株買い約8,000億円を足しても、純利益の4割弱です。分割後の1株30円で、仮に期末も同じ30円なら年60円。10/30終値の13,470円で利回り約0.45パーセント、わたしの平均取得単価17,811円で約0.34パーセントです。高配当株と呼べる水準ではありません。「累進配当」の言葉に期待しすぎないように、と自分に言い聞かせています。

4. 手元の現金には、払う予定の税金も含まれている

9月末の現金1兆3,973億円から借入金6,039億円を引くと、約7,900億円の“ネットキャッシュ”です。一方で、まだ払っていない法人税(未払法人所得税)が約9,747億円あります。これから入ってくる利益で十分まかなえる額ですが、見た目ほど現金が“余っている”わけではないことは頭に入れておきます。

5. そのほかのリスク

  • 8月27日、サンディスクと合わせて2032年までに日本で約5兆円を投資する計画を発表。会社にとっては成長投資ですが、業界全体で供給が増えれば、いずれ値下がりの原因になりえます
  • 7月に子会社に対する訴訟で陪審評決があり、Q1に訴訟損失引当金366億円を計上
  • 大株主は、投資ファンドのBCPE Pangea Cayman2(ベインキャピタル系とみられる・議決権14.19%)と東芝(14.12%)。大株主がまとまって売り出すと、需給が崩れる可能性があります(現時点で売却が決まっているわけではありません)

株価の水準: PER約4倍は割安か

10/30終値13,470円での指標を計算してみました(自己株式を除いた株数で計算)。

指標 数値 計算の前提
時価総額 約21.5兆円 発行済株式数から自己株式を除いた約15.98億株
PER(Q3のペースが1年続いた場合) 約4.0倍 Q3見通しの1株利益851.11円×4=3,404円
PER(今期をQ3並みのQ4で終えた場合) 約4.4倍 Q1〜Q3+Q4(=Q3並み)で1株利益3,054円
PBR 約7.3倍 1株あたり純資産 約1,833円
配当利回り(年60円と仮定) 約0.45% 期末配当は未定

PER4倍は、数字だけ見れば“超割安”です。でも、わたしはこれをそのまま割安とは受け取っていません。

📚 初心者向けワンポイント解説:シクリカル株のPERは「逆」に読む

キオクシアのように、業績が景気や製品価格で大きく上下する株を「シクリカル株(景気循環株)」と呼びます。シクリカル株には「PERが低い時が売り時、PERが高い時が買い時」という、ふつうとは逆の格言があります。

理由はシンプルです。業績のピークでは利益が大きいのでPERは低く見えますが、市場は“この利益はもう続かない”と見て株価を上げません。反対に、業績の底では利益が小さいのでPERは高く見えますが、市場は“ここから回復する”と見て先に株価を上げ始めます。

今のキオクシアのPER約4倍は、「市場は今の利益が長く続くとは見ていない」というサインかもしれません。PERの基本は、PERとは?初心者向け解説にまとめています。

今後のシナリオ

ここからが本題です。カギは「メモリ(NAND)の値段がいつまで高いまま続くか」と「AIデータセンター向けの投資がいつまで続くか」の2つだと考えています。

わたしの平均取得単価17,811円に戻るには何が必要か、という目線で計算してみました(あくまで計算例で、株価の予想ではありません)。

1株利益の年率(分割後) 想定 PER4倍 PER6倍 PER8倍 17,811円に必要なPER
3,404円 Q3のペースが続く 13,616円 20,424円 27,232円 5.2倍
2,500円 利益が約3割減る 10,000円 15,000円 20,000円 7.1倍
1,700円 利益が半分になる 6,800円 10,200円 13,600円 10.5倍

今の利益が続くなら、PERが4倍から5.2倍に少し見直されるだけで、取得単価に戻る計算です。一方、利益が半分になれば、PER10倍台まで評価が上がらないと戻りません。この表を頭に置いて、3つのシナリオを考えます。

シナリオA(強気): 高い利益が2027年も続く

  • 前提: AIデータセンター向けの需要が強いまま、NANDの値段が高止まりかさらに上昇。Q3の実績も、Q2と同じように見通しを上回る
  • 株価の見え方: “ピークではなく高原”と市場が受け止めれば、PER4倍が見直される余地がある。累進配当と追加の自社株買いが出れば、それも支えになりそう
  • 確認するサイン: Q3の実績が見通しの売上2兆5,000億円を上回るか、次のQ4見通しが増収か、期末配当が決まるか、追加の自社株買い

シナリオB(中立): 利益は高いが「ピーク」と見られ続ける

  • 前提: 四半期の純利益は1.3兆円前後で推移するが、伸びは止まる。市場は“いつか下がる”前提でPERを低く据え置く
  • 株価の見え方: 決算のたびに上下するが、方向感は出にくい。10/22〜10/28の値動き(終値12,595円〜14,340円)のような、ニュース次第で1日に10パーセント前後動く展開が続くことを想定しています
  • 確認するサイン: 同業(SKハイニックス・サムスン電子・マイクロン・サンディスク)の決算と見通し、AI関連の米国株の動き

今回の「Q3横ばい」の見通しは、このシナリオBにいちばん近いと思っています。

シナリオC(弱気): メモリ価格がピークアウトする

  • 前提: 各社の増産で供給が増え、NANDの値段が下がり始める。あるいはAIへの投資が一服する。スマホ・PC向けは、すでに“鈍化傾向”。ここに円高が重なる
  • 株価の見え方: 利益の縮み方は、増え方と同じくらい速い可能性があります。1年前の中間期の営業利益は1,308億円だったことを思い出すと、利益が半分になるのは十分ありうる話です。その場合、上の表のとおり、今の株価でも割安とは言えなくなります
  • 確認するサイン: NANDの契約価格の下落、会社の見通しが減収に変わること、AI関連企業の投資計画の下方修正

10月は、コアウィーブ・ショック(10/15)、ラムリサーチの見通し(10/22)、インテル決算(10/30)と、AI半導体への不安が出るたびにキオクシアは大きく売られました。シナリオCへの警戒は、すでに株価にある程度は入っていると見ています。

わたしの持ち方

キオクシアは、わたしのポートフォリオの中では“高配当株”ではなく、AI半導体の値上がりを狙う“サテライト”の位置づけです。34株・評価額457,980円で、ポートフォリオ全体から見ればごく一部。だからこそ、「下がったら少しずつナンピン」を続けて、気づいたら比重が大きくなっていた、というのは避けたいと思っています。

シナリオ わたしの対応(いまの考え)
A(強気) 売らずに持つ。取得単価17,811円に戻っても、すぐには売らない
B(中立) 持ち続ける。ナンピンは、大きく下げた日にこれまで通り1〜2株まで
C(弱気) ナンピンを止める。会社の見通しが減収に変わったら、損だしも含めて持ち株数を見直す

10月は「下げすぎ」と思って3回買い増し、そのうち1株は翌日に売りました。振り返ると、決算前に値動きで買っていたのは反省点です。ここからは株価ではなく、会社の見通し(次の四半期が増収か減収か)を判断の軸にします。

週明け以降のチェックポイント

  • 11月2日(月)の株価の反応。“見通し上振れ・初配当”が評価されるか、“Q3横ばい”が嫌われるか
  • 12月8日の中間配当の入金(900円・税引前)
  • 同業の決算: マイクロンの9〜11月期決算(12月中旬ごろの見込み)
  • NANDの契約価格の動き
  • 為替: 会社のQ3の想定は1ドル157円
  • Q3決算(日程は未発表): 実績が見通しを上回るか、Q4見通しが増収か減収か、期末配当が決まるか

まとめ

キオクシアHDの2027年3月期Q2決算は、売上2兆4,800億円・純利益1兆3,557億円で、自社の見通しを上回りました。初配当(分割前90円・分割後換算30円)と累進配当の方針、自己資本比率49.8パーセントの財務と、内容に文句をつけるところはほとんどありません。

一方、Q3の見通しは前の四半期比で売上プラス0.8パーセントと横ばい。スマホ・PC向けの需要の表現も「堅調」から「鈍化傾向」に変わりました。PER約4倍という低さは、市場が「この利益は続かない」と見ているサインかもしれません。

わたしの基本シナリオは、B(利益は高いが、ピークと見られ続ける)。持ち続けますが、ナンピンは控えめにして、判断の軸は株価ではなく会社の見通しに置きます。シナリオCのサインが出たら、損だしも含めて持ち株数を見直します。

高配当株を中心とするわたしのポートフォリオの中で、キオクシアは異色の銘柄です。だからこそ、決算のたびにこうしてシナリオを見直して、“なんとなく持ち続ける”ことだけは避けたいと思っています。

明日も、地味に、着実に。


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免責事項:本記事は個人の投資記録・振り返りであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載のPERや株価の計算例は、筆者が決算短信の数値をもとに試算したもので、将来の株価を予想するものではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。